学生時代のデザインを振り返る その1 〜2008年 てらすもの〜
学生時代に課題で作った作品というのは、社会人経験が長くなるとポートフォリオに掲載する機会が減っていきます。ですが、学生時代の制作物というのは情熱の塊のようなもので、しばしば自分自身を語る時の大切な要素として機能してくれることがあります。
というわけで、このシリーズでは自分が学生時代に作った制作物を1つずつ時系列順に紹介していきます。workに載せるのは恥ずかしいけど、埋もらせるのももったいない。このポートフォリオサイトの目的の1つは「自分の人間的な部分を知ってもらう」ことにあります。記録もかねて、皆さまに自分のことを少しでも知ってもらえる機会になれば幸いです。
所属していた学科について
本題に入る前に、自分が通っていた大学のこと、学科についてかんたんに説明します。
自分が通っていたのは東洋大学ライフデザイン学部の人間環境デザイン学科でした。特徴はユニバーサルデザインを主軸にした新学科であることと、2年次までプロダクト・建築・生活支援(車椅子などの生活自助具)の3つを学び、3年次からはそれぞれの専門コースに進むプロセスを採用していたことでした。ちなみに自分は1期生。こないだゼミの同窓会に10期生の子がきて時の流れを感じました。
1年次は色彩構成や建築図面の模写などの基礎学習が多いのですが、コースに分かれる前の2年次の秋〜冬になると少しずつ本格的な課題が出されるようになります。例えば建築なら、あらかじめ設定された家族構成や土地面積、周辺環境に合った住宅を設計するとか、プロダクトであれば与えられたテーマからモノを作る、などでした。
というわけで、前置きが長くなりましたが、今回紹介するのはそんな2年次の冬に出された、プロダクトデザインの演習課題で制作したものです。ちょうど、今から10年前になります。
テーマ:てらすもの
先生たちも試行錯誤していたからか、自分たちの代の課題テーマは抽象的なものが多かった印象を受けます。はじめて本格的に「自分の頭で考え、ものの形を考える」課題のテーマは「てらすもの」でした。つまりは照明ですね。
課題の詳細はもう覚えていないのですが、確か提示された条件は「照明、明かりであること / プレゼンテーション用のボードも制作すること」だけだった記憶があります。自由な反面、どこを落としどころとするかは各人の判断に任されるので、いま思うとなかなか難しいお題だなと思います。
ちなみに制作期間は1ヶ月とか1.5ヶ月だったかな……?プロダクト・建築・生活支援の各課題が1つの演習枠で順番にまわってくるので、フルに全コマを使えないのです。自分たちの学年は全体で180人ほどいて、3グループに分かれてそれぞれの演習枠があてられる、という形式でした。
つくったもの:SHIRANUI
さて、そんなテーマに対して自分が制作したのが、触って点灯・消灯できる公共空間用の照明「SHIRANUI」でした。
上記はイメージ用のプレゼンボード。こうして見ると、写真が暗くて何だかわかりませんね。そして特に意図せず適当に選んだ書体。。
スペックなどの説明用に作ったボードが下記になります。
なお、学生時代の自分はテキストがポエティックという特徴があります。たぶん文章を考えるのが好きだったのでしょう。あと手描きの人物イラストを先生に「ちゃんと写真からトレースしなさい」と言われたのを今でも覚えています。
どうやってアイデアを思い付いたかはさすがに忘れましたが、説明文にもあるように「触ったら点く明かり」→「そこで生活している人たちが自分たちの手で明かりを作る、不完全な存在があると面白いのでは」みたいな発想がスタートにあったような気がします。
当時のスケッチ帳から。見た目しか考えてないことがわかりますね。。脊椎のフレキシブルライトて!ドーム型の部屋て!
こちらは当時作った模型。雑い。がんばって東急ハンズで材料を探した記憶があります。
就活用のポートフォリオ用にリファインした版。それでも雑に変わりはない……(当時の自分はがんばったつもりでいた)
いまふりかえると、これほんとに技術的にできるの?とか、メンテナンスどうやってやるの、とか、1年後も10年後もちゃんと使ってもらえるの、などツッコミどころが多いですが、はじめて自分の頭で考え、自分の手で存在を生み出したものだけに思い入れがそこそこあります。
自分に自信をくれた作品だった
当時の自分は精神的にけっこう荒んでいて、友達を意図的に作らなかったり、建築コースに配属されたら絶対辞める、などの状態でした。そんな自分を救ってくれたのがSHIRANUIでした。
この演習は先生たちからの評価とは別に、学生同士による投票(1人3票が持ち票)も併せておこなわれたのですが、なんとSHIRANUIにダントツで票が集まったのです(たぶん……記憶が違っていたらスマヌ同期よ)。いち大学のいち学科のいち演習の3グループのうちの1つに過ぎませんが、それでも当時の自分にとってこれほど自信がついた出来事はありませんでした。おかげで自分の存在も大学内で少しは周知されたようで、これを機に「本気でデザイナーを目指してる学生がそれとなくお互いの存在に気付きはじめ、知り合うようになる」動きに自分も乗ることができました(おかげで友達もできた)。本気でやれば、ちゃんと誰かが見てくれていて、結果がちゃんと付いてくる、そう強く感じることができた演習でした。